本年度はiPS細胞を応用した歯周病ワクチンを開発するにあたって、当研究室での樹状細胞の誘導とその確認方法を確立した。すなわち骨髄細胞からGM-CSF及びIL-4を用いて樹状細胞を誘導、確認した。またTNF-α及び抗CD40抗体の添加により成熟樹状細胞を誘導した。現在、マウス歯肉細胞由来iPS細胞をOP9細胞と共培養することによる樹状細胞の誘導を行っている。 日本成人の80%近くが罹患している歯周病に対して有効な免疫療法を行うには、歯周病原性細菌に対して免疫応答を適切に賦活化する必要がある。代表的な歯周病原性細菌であるP.gingivalisの線毛を抗原とし、Flt3 ligand cDNA及びCpG ODNを粘膜アジュバントとして用いたところ抗原特異的抗体反応を誘導できた。インフルエンザ抗原を用いたところ同様の強い抗原特異的抗体反応が誘導された。これらのことは、樹状細胞をターゲットにした粘膜ワクチンが様々な疾患への応用しうることを示すものである。 NALTにおける免疫老化の特性評価を行った。免疫組織化学分析により、若齢マウス(6-8週齢)と比較して老化マウス(>2年齢)は樹状細胞の数が減少していることが分かった。またFACSによっても確認することが出来た。しかしながら抗原提示能は同等であった。NALTはIgAの誘導組織として知られているのでIgAクラススイッチを調べた。AID特異的mRNAの発現のレベルは低下したものの、Iμ-Cα特異的mRNAのレベルは同等であった。これらのことは適切なNALT樹状細胞をターゲットにしたアジュバントは免疫老化に対して抗原特異的なIgA抗体応答を補償する可能性が示唆された。
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