研究概要 |
歯周炎は,様々な全身疾患や炎症性疾患と関連することが分かっている。さらに歯周炎が進行すると,活性酸素種を過剰に産生して酸化ストレスを悪化させる。また,慢性肝疾患(肝細胞がん等)により解毒作用,タンパク質合成やホルモン状態の異常が引き起こされる。今回の研究の目的は,肝細胞がん患者(HCC)における歯周病と酸化ストレスの状態を検討することである。 岡山大学病消化器内科に入院している肝細胞がん患者64名を対象とし,歯周病状態を検査した。肝細胞がん患者におけるステージ分類には,腫瘍のステージ(TNM分類)と肝機能を合わせて反映しているJapan Integrated Staging(JIS)システムを用いて評価した。血漿中の活性酸素種濃度は,reactive oxygen metabolites(ROM)を用いて測定した。 肝細胞がん患者のうち,慢性歯周炎患者(HCC+P)は31名,歯周病状態の良好な患者(HCC+H)は33名だった。両群間において,性別,年齢,ボディマス指数,飲酒や喫煙歴,糖尿病や高血圧患者の割合に有意な差は認められなかった。HCC+P群において,HCC+H群よりも高いJISスコアが認められた(p=0.027)。ROM値において,HCC+P群の方が約29%高い値だった(p<0.001)。 進行したHCC患者において,初期のHCC患者に比べて歯周炎に罹患している割合が高く,酸化ストレスの値も高かった。
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