研究概要 |
本年度では,昨年度に続きラットモデルを用いて,歯周炎の進行に対する水素水摂取の効果を組織学的・生化学的に検証することを目的とした。 8週齢のWistar系雄性ラットを7匹ずつ3群に分けた。1群は対照群として特に処置を行わなかった。その他の2群(歯周炎群および歯周炎+水素水群)は,イソフルランによる吸入麻酔下で両側の上顎第一臼歯にリガチャーを4週間巻きつけ,実験的歯周炎を惹起させた。さらに歯周炎+水素水群では,4週間の実験期間の間,800~1000μg/Lの濃度で配合された水素水が与えられた。その結果,歯周炎群の血清Reactive Oxygen Metabolites (ROM)値は,経時的に大きくなり,4週目では対照群よりも有意に高い値を示した(p<0.05)。歯周炎+水素水群の血清ROM値も経時的に高くなったが,4週目の値は歯周炎群よりも有意に低かった(p<0.05)。また,歯周炎群の歯周組織では,対照群と比べて有意に大きな好中球の浸潤が多く認められ(p<0.05),その一方で,歯周炎+水素水群の歯周組織では,多核好中球の浸潤は少なく,その密度は歯周炎群と比べて有意に小さかった(p<0.05)。血清ROM値は,歯周組織における活性酸素種の産生の大きさを反映する。したがって,歯周炎群よりも歯周炎+水素水群の血清ROM値が有意に低かった本研究の結果は,水素水が歯周炎によって産生された活性酸素種を消去したことを示唆している。また,このような状況下において,歯周炎+水素水群の好中球密度は歯周炎群よりも有意に低かった。活性酸素種の過度な産生は歯周炎を進行させる要因となるので,水素水には,活性酸素種の消去によって歯周炎の進行を抑える作用があることが推測される。
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