当該年度においては、Internal transcribed spacer (ITS)領域の断片長多型を利用した口腔真菌の網羅的解析系の確立を目指した。口腔常在真菌として過去に報告のある10菌種(Candida albicans、Candida tropicalis、Candida glabrata、Candida parapsilosis、Candida krusei、Candida guilliermondii、Candida kefyr、Cryptococcus neoformans、Geotrichum candium、Aspergillus fumigatus)を培養した後DNAを抽出し、真菌共通配列であるITS1(5'-CTT GGT CAT TTA GAG GAA GTAA-3')と蛍光色素で標識したITS4(5'-TCC TCC GCT TAT TGA TAT GC)を用い、キャピラリー電気泳動によって断片長とその蛍光強度を測定した。本解析系では唾液1mlあたり10^2cfuのCandida albicansを検出することが可能であった。また、上記の10菌種から得られたDNA断片長は、配列から予測される断片長とよく一致することが確認され、本解析系でこれらの菌種を識別できることが明らかになった。本解析系の確立により、比較的容易に口腔真菌の構成を把握する事が可能になった。次年度はこの手法を用いて、高齢者集団から採取された舌苔についての解析を行い、それぞれの菌種やその組み合わせと口腔ないし全身の健康状態との関連について検討を行っていく予定である。
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