研究課題
【研究の意義・重要性】口腔内細菌が産生する硫化水素(H_2S)やメチルメルカプタン(CH_3SH)といった揮発性硫化物(Volatile sulphur compounds : VSC)は青酸ガスに類似する細胞エネルギー産生阻害や生体の重要なタンパクであるコラーゲンの合成阻害や分解を行う細胞毒性を有する。口腔細菌由来のVSCは致死量には達しないものの、歯肉粘膜や歯肉細胞に有害な影響を及ぼすことが報告されている。結腸など腸管内において口腔と同様、細菌由来の高濃度H_2SやCH_3SHが産生されるため、VSCによる腸管内組織への悪影響を防ぐため、VSCの無毒化を促す防御機構が存在することがわかった。従って、口腔細菌由来の高濃度VSCに対して、口腔粘膜組織由来の防御機構も存在すると考えられる。もしこれら防御機構が作用していれば、個人毎のVSCに対する感受性や抵抗力に違いがあるとも考えられ、その違いが口腔粘膜に対するVSCの為害作用の差異に影響を与えたり、口腔癌や歯周病などの口腔疾患の病態に関与している可能性も考えられる。従って、口腔粘膜における抗VSC防御機構を解明することは、それら口腔疾患の病態の解明につながる可能性も有している。【平成22年度の研究実施内容】本研究では、VSCに対する生体防御因子としてチオ硫酸イオウ転移酵素Thiosulf ate Sulfurtransferase (TST:以下ロダネーゼ)に着目した。ロダネーゼは核によって指令されるミトコンドリアマトリックス酵素であり、肝臓や腸管において生体内含硫無機化合物のシアン化物の解毒、鉄硫黄タンパクの形成、硫黄含有酵素の修飾などの役割が示されている。現在、GenBank DNAデータベース上のヒト、ロダネーゼの塩基配列を基に特異的プライーマーを設計した。口腔粘膜上皮由来の正常細胞、ケラチノサイトおよび扁平上皮癌細胞を用い生成したcDNAからその特異性を示す一方で、九州歯科大学附属病院に来院している成人患者50名から同意の下、口臭検査や口腔内診査を行い、臨床サンプルとして患者の頬粘膜組織を綿棒にて採取し、cDNAを生成している。
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