本研究は、認知症高齢者などに出現する口腔関連の原始反射に注目し、これらが摂食・嚥下機能や低栄養に与える影響について検討し、さらには介入調査により原始反射が出現した高齢者に適した食事の介助方法を検討することを目的とした。 3年間の追跡調査が可能であった介護老人福祉施設2施設に入居している要介護高齢者127名のうち、経口摂取をしている121名、平均年齢86.3±7.8歳(男性33名・女性88名)を対象とし、介護老人福祉施設入居者において原始反射出現と予後との関連について検討した。対象者に対し、吸啜反射、咬反射、口尖らし反射の有無を調査し、原始反射出現の有無と、ADL(Barthel Index)、認知機能評価(CDR)、食形態、BMIとの関連について、さらには予後との関連について検討した。対象者のうち、38名(31%)にいずれかの原始反射が認められた。ADL、CDRと原始反射出現との間に有意な関係が認められ(p<0.001)、食形態との間においても有意な関係が認められた(p<0.05)。1年後では18名、2年後では7名に新たにいずれかの原始反射が認められ、3年後では新たに認められるものはいなかった。初回評価時に原始反射がなかったもののうち1年後の反射の有無と2年後の転帰(生存対退所または死亡)で有意な関係が示された(p<0.05)。また、2年後の反射の有無と3年後の転帰においては有意な関係は認められなかった。以上の結果より、原始反射の出現と予後との関連が示唆された。今回の研究結果から、今後原始反射を有する要介護高齢者の食事介助方法の開発のためには介入調査が必要であることがうかがわれた。
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