シミュレーターを用いた教育施設が全国の大学や医療機関で整備されつつあるが、その教育プログラムが明確に確立されていないため、体系的な看護技術教育の実施および利用者による主体的な活用が充分とはいえない。また、シミュレーター教育の有用性やアウトカムが明らかにされておらず、シミュレーターを設置・運用することの社会的意義が明確化されていないため、その積極的な運営に対する社会的評価が得られているとはいえない。以上より、シミュレーターを用いた看護技術教育のプログラム開発とその有用性について検証することを目的とした。 対象は臨床看護師とし、看護実践場面での看護行為についてビデオカメラを用いた多方向からの観察法によるデータ収集を行った。臨床の現場で行われた看護実践についてICNP(看護実践国際分類)を用いた看護行為の特定および内容分析を行い、質的方法により分析・抽出した。分析過程における信頼性および妥当性を確保するため、複数の研究者から行われた看護行為についてスーパーバイズによる検証を受けた。看護技術ごと、看護行為の類型化を行い、どの看護師でも共通して実践された看護行為と、そうでない看護行為に分けた。どの看護師でも共通して実践された看護行為を実践に不可欠な看護行為とし、そうでない看護行為は患者の状況や治療や検査の場面、環境に応じて対応しうる看護行為とし、プログラムの作成を行った。また、シミュレーターを用いた教育の実施と、臨床現場における医療安全に関連する項目との関連について、職場やチームの風土、組織全体の離職率などといった組織を対象としたアウトカム評価について調査を行った。研究成果は、研究者が独自に作成したホームページにより閲覧可能とし、研究成果の活用を促進するシステム作りを構築した。
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