動物実験を基盤にしたDTIの発生機序および看護援助技術の開発とその効果を明らかにすることを目的とし、DTIの動物実験モデルの作製に向け基礎的実験を行った。 雄性Jc1/ICRマウスを用い、深麻酔下で背側皮膚への血管を腰背部の骨格筋下層部で結紮し虚血モデルを作製し、1、3、5日目後に皮膚標本を摘出した。 術後1日では、マウスの背側皮膚は肉眼的観察では無傷の状態であり、血色不良等の著明な変化は認められなかった。組織学的観察では、筋層の浮腫、顕著な好中球の遊走や壊死徴候を示す筋線維束が散見され、皮下組織層、真皮層においても、好中球の遊走、浮腫がみられた。3日目の肉眼的所見ではわずかな皮膚の変色、5日目では、明らかに茶褐色に壊死した皮膚がそれぞれ観察された。3日目の組織学的観察では、浮腫、炎症性細胞浸潤の増悪がみられ、5日目では表皮の一部の欠損がみられた。急性炎症の所見が広範囲にわたることから、筋や皮下組織レベルでの軟部組織における局所の虚血状態は、広範囲な皮膚組織の領域に影響を与えることが示唆された。 動物モデルの解析と併せて、ヒトでの発生機序に関するデータを確認するために解剖実習遺体においてDTIを疑う事例の所見を検討した。仙骨部の皮膚組織では、真皮表層に浮腫を認め真皮層では毛細血管が拡張していた。皮下組織では、汗腺・血管周囲に浮腫を、脂肪細胞周囲に血管の拡張を認めた。さらに、筋線維と筋内膜との境界、筋周囲膜との境界の拡張がみられ、一見I度の褥瘡が疑われる皮膚組織において、深層では浮腫や充血が起こり炎症反応を示したことから重篤な組織損傷が生じていると考えられた。
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