研究概要 |
深部損傷褥瘡(DTI)は患者のQOLを著しく悪化させ重篤な褥瘡へ移行するリスクが高いため、治療や悪化予防策の検討が急務である。患者の側近にある看護師は褥瘡を発見する機会が多いため褥瘡による組織損傷の悪化予防の看護援助が開発される意義は大きい。組織損傷悪化を抑制する看護援助の開発と効果を検討することを目標に、今年度はその評価のための再現性の高いDTI動物モデルの作製に取り組んだ。 H22年度の実験を基盤に圧迫創作製方法を考案した。9週齢のWistar系雄性ラットの麻酔後腰背部を除毛した。圧迫創はネオジム磁石1個(534mT)を腹腔内へ埋め込み腰背部皮膚から同タイプの磁石1個を装着して皮膚全層および深部筋層を6時間圧迫し作製した。6時間後に磁石除去後毎日皮膚状態を観察した。圧迫創部および対側の皮膚を1,3,5,7,10,14,21,28日目に摘出した。統一した方法で改良を重ねた圧迫方法は、n数を増やして圧迫創の再現性を肉眼的および組織学的に検討した。 その結果、肉眼的所見では、1Day~2Dayでは創は蒼白で創周囲は発赤がみられる状態が継続し、3Dayから創中心領域が黄色~茶褐色に変化し、6,7Dayでは褐色へ変化した。その後痂皮は徐々に縮小し始めたが、26~28日頃まで創部を覆っており損傷が継続していた。組織学的所見からは、皮膚全層および皮下・筋組織に及ぶ組織損傷が認められた。1~5Dayでは、各組織に好中球など炎症性細胞の遊走、マクロファージによる貧食など創傷治癒急性期の所見が観察された。7日目から、損傷創部辺縁、皮下組織層に血管の拡張がおこり新生血管が認められ深部筋部では活性化した核が認められたが、痂皮の下部では、10Dayでリンパ球、マクロファージが継続して観察され、慢性創傷と考えられる所見が認められた。これらの所見は、各日実験群において同程度の損傷および創傷治癒過程を示した。以上のことから、本実験の圧迫創の損傷が慢性創傷の所見を有し、DTIのモデルとして有用であることが示唆された。
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