研究協力者からの指導をもとに、創作製を外科用ハサミでの切開から、生検トレパン(3mm)を使用した方法に変更し、対照マウス、糖尿病マウス(以下、糖尿病群)を用いて実験を行い、データを収集した。生検トレパンで作製した創傷は切開創よりも創面積が大きくなるため、受傷後15日目までのデータに加え、受傷後20日目まで観察した。創部は創周囲を含めてデジタルカメラにて経時的に撮影し、創収縮率を解析した。摘出した組織は、常法に従い、固定、脱水後、パラフィン、樹脂に包埋した。ヘマトキシリン・エオジン染色、エラスチカ・ゴールドナー変法染色、渡銀染色を施し、光学顕微鏡下での観察を進めた。また、凍結切片を作製し、フィブロネクチンと血管内皮細胞の局在をそれぞれ免疫組織化学的に観察できるか確認した。平成24年度は膠原線維も特定できるよう進める予定である。 今後、対照群と比較して、糖尿病群にみられる線維成分のフィブロネクチン、膠原線維、細網線維の量と構造を明らかにし、その部位の新生血管の形成の様子を観察することで、糖尿病マウスの肉芽期の創部にみられる線維成分と血管新生の関係性から、肉芽期における治癒遅延のメカニズムを形態学的に明らかにできると考えられる。さらに、今年度は昨年度に未実施であった電子顕微鏡下での微細構造の観察を行い、光顕での観察結果と合わせて考察する予定である。また、研究実施計画では肉芽期を0.5日間隔で観察するとしたが、生検トレパンによる創作方法では創面積が広いことから、1日間隔で肉芽期のダイナミックな治癒過程が観察できるため、肉芽期においては、1日間隔でのデータをまとめる予定である。
|