本申請では、看護活動時の観察力や危険予知力と筋活動の関係を知るために、アイカメラで眼球運動を、筋電図で筋活動を測定し、観察から看護技術実施までの視覚情報の取り込みとその認識、それを反映した行動を明らかにすることを目的とし、2種類の実験を行った。 看護学演習及び実習を終えた看護大学4年生の危険予知の特徴を、眼球運動と危険認識から明らかにすることを目的とした。比較対象は1年生を設定し、両群とも視覚や視野、言語能力が正常の者5名ずつとした。ベッドから車椅子への移乗場面を設定し、観察時の眼球運動をアイカメラで計測した。さらに、観察前の注目点、観察後の記憶内容と危険な点、理由を自由回答により得た。4年生は1年生に比べ、時間と回数を多くして注視することで注目点と記憶内容の一致率が高め、意図をもった観察をしていた。また、記憶内容と危険な点とを結び付けた理由には、1年生にはない患者の状態に合わせた理由が挙がった。 自己の動作を視覚的に認識させることでおきる身体的負荷の変化を明らかにすることを目的とした。体位変換に関する看護教育を受けた者20名とし、身体的負荷は、Rate of Perceived Exertion(以下RPE)とVisual Analog Scale(以下VAS)の主観的指標と筋活動(日本光電:WEB-1000を使用)から測定した。また、ビデオ視聴後に自身の体位変換の特徴や体位変換方法の変更点やその理由を自由回答により得た。動作を視覚的に認識したことで、RPE10名(50.0%)、VAS背中6名(30.0%)、VAS腰6名(30.0%)、VAS腕12名(60.0%)、VAS足11名(60.0%)で主観的負担感が減少した。筋活動は、1回目の活動量に比べ広背筋59.3~129.6%、脊柱起立筋30.1~112.8%、上腕二頭筋72.9~125.3%、大腿四頭筋36.5~157.5%に変化した。自己の体位変換動作を視覚的に認識することは、主観的負担感を減少させ、身体的負荷が減少するような筋活動の変化を起こすことが明らかになった。
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