本研究は、医療安全に関する卒前教育の実態ならびに新人看護師の組織適応と医療安全行動との関係を明らかにし、卒前・卒後の一貫した医療安全教育への示唆を得ることを目的とした3年間の計画の最終年度にあたる。東海・北陸・甲信越・関西地方における、500床以上を有する総合病院のうち、了承の得られた42カ所において、平成23年4月に入職した新人看護師、及び5~10年目のベテラン看護師を対象に、平成23年12月~2月に質問紙調査を実施した。 結果は、有効回答は新人看護師383名、ベテラン看護724名であった。卒前教育の実態は、「医療安全に関する科目履修者」は63.3%、「実践現場に役立った」86.9%、「看護技術の復習機会があった」62.3%の回答があった。状況判断できるようになった時期として66.3%が「未だに進められない」と回答した。ベテラン看護師からみた新人看護師が、「一日の流れにそって円滑に仕事を進めるようになる時期」は、6カ月~1年後で約6割をしめ、「チームの一員として仕事を進めるようになる時期」は、1年後と3年後に分かれた。「状況判断ができるようになったと感じた時期」は、3年目が最も多かった。 医療安全に関する科目履修は、実践現場に役立っていたが、状況判断を必要とする高度な看護実践能力の獲得に向けては時間を要している状況が明らかとなった。組織適応は、相談する相手に変化があったものは、他者との協同作業を肯定的に捉え、慎重な行動をとり、事故予防に向けて自らの認知行動をモニタリングしコントロールしていることが明らかとなった。卒前教育に協同作業認識を高め、チームへのアクセスがスムーズに行えるような教育、卒後教育として医療安全研修等で拡充した行動レパートリーを実際のチームでの行動実践につなげる教育方法を開発する必要性が示唆された。
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