褥瘡の初期症状としてI度褥瘡があり、その判断は看護師が行っているが、現状行われている目視での発赤観察等による判断方法は直接的に皮膚の血液循環を評価するものではないため、看護師個人による判断の差があり、表皮が欠損したII度褥瘡にまで進行した状態で発見されることがある。そこで、血流が熱移動の調節に主導的な役割を果たしていることに着目し、皮膚に冷却刺激を加えた際の皮膚表面温度から皮膚組織の温度伝導率(以下、温度伝導率)を推定し、皮膚の血液循環を評価することで、早期に褥瘡発生予測ができると考えた。 本年度は温度伝導率と血流量の相関関係および、褥瘡好発部位における血流分布を確認し、温度伝導率による血液循環評価の妥当性を検討するため、健康な成人女性を対象に次の2つの実験を行った。 1.皮膚表面温度、皮膚血流量の測定を行い、血流量と温度伝導率との相関分析を行った。測定環境を室温24℃の通常環境と、室温10℃の冷環境、お湯で加温する温環境を設定し、血流量に差が生じる状態で測定を行った。測定部位は安定して測定できる前腕部と血流量変化が著明な指先で測定した。血流量は、前腕部、踵骨部ともに、冷環境、通常環境、温環境の順で上昇が見られた。温度伝導率は踵骨部では、冷環境、通常環境、温環境の順で上昇が見られ、血流量と同様な傾向が見られたが、前腕部では、冷環境で値が低くなり、血流量と逆の変化を示した。これにより、部位によって血流変化による温度伝導率への影響が異なることが明らかとなった。 2.褥瘡好発部位である仙骨部において、血流分布を血流計で確認した。仙骨部中央の血流量と仙骨部全体の血流量では顕著な差はなく、仙骨部全体における血流量の偏りは見られなかった。このことから、仙骨部中央で測定することの信頼性が確認された。
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