褥瘡の初期症状としてI度褥瘡があり、その判断は看護師が行っているが、現状行われている目視での発赤観察等による判断方法は直接的に皮膚の血液循環を評価するものではないため、看護師個人による判断の差があり、表皮が欠損したII度褥瘡にまで進行した状態で発見されることがある。そこで、血流が熱移動の調節に主導的な役割を果たしていることに着目し、皮膚に冷却刺激を加えた際の皮膚表面温度から皮膚組織の温度伝導率を推定し、皮膚の血液循環を評価することで、早期に褥瘡発生予測ができると考えた。 1.手法の改良 平成22年度までは熱移動に主導的な役割を果たしている血流の評価のために、温度伝導率を使用していたが、本年度は冷却刺激時の温度応答から皮膚血流を推定できる手法を検討、考案した。手法の改良は、冷却刺激を円筒刺激とすることで、冷却刺激時の温度応答をより明確にし、推定のための解析にかかる時間を短縮した。この改良により、皮膚組織の温度伝導と、皮下約2mm程度範囲の血流の推定値を求めることが可能となった。 2.褥瘡発生危険要因との関係の検討 改良された手法を用いて、褥瘡発生危険要因との関係を検証することを目的とし、入院中の高齢者を対象として皮膚表面温度測定を行った。その結果、褥瘡発生危険リスク評価ツールによる明確な違いがみられなかったが、測定部位および圧迫後の皮膚虚血反応により、本手法による推定血流値および温度伝導率に違いがある可能性が明らかとなった。
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