実質的な死亡原因の第1位として動脈硬化の関与があげられ,動脈硬化進展を抑制することは重要な課題である.簡便であれば,運動を遂行できない対象者でも遂行できるのではないかと考え,免疫機能,血流動態,自律神経機能に作用する足浴が動脈硬化の改善・抑制に及ぼす効果について検討する. 若年者を対象とした一過性の真水,人工炭酸泉足浴が動脈硬化度及び心臓自律神経調節に及ぼす影響について検討した.水温(35℃,40℃及び44℃)で足浴を行った.体温は炭酸泉足浴時の方が低値を示す可能性が示唆された.主観的な感覚によるリラックス度,全身の温度感覚は水温に依存した.浸水していた足部の温度感覚も水温に依存したが,水温が高いと真水と炭酸泉による温度感覚の差がなく,水温が下がるに従い炭酸泉浴の方が温かいという感覚が得られた.体温調節と温度感覚にずれがみられたが,自律神経調節ではその結果をうまく反映しなかった.より短時間での解析及び評価の必要性を感じた. 昨年,我々実験計画と同様の内容をHu Qらのグループにより報告され,一過性の足浴により動脈硬化指数が低下することが明らかにされた.そこで急遽研究方法を変え,冷水を用いた足浴が直腸温,心臓自律神経調節及び動脈硬化度に及ぼす影響について検討した.水温15℃の真水及び人工炭酸泉足浴及びコントロール条件を行った.室温25.5℃,水温15℃,15分間の足浴では,足浴後の動脈硬化指数に影響を及ぼさない可能性が,また人工炭酸泉足浴時において,他の条件時と血圧応答が異なる可能性が示唆された.直腸温が低下する水温を用いた足浴では,逆に増加する可能性も考えられた.足浴が動脈硬化の改善・抑制に影響を与える可能性は考えられる.室温や季節変動因子の影響を受ける可能性も考えられること及び継続的足浴が動脈硬化予防・改善に及ぼす影響について更なる検討を行う必要性があると考えられた.
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