【目的】悪性腫瘍患者の核心温度の変動は未だ明らかにされていない。そこで対象者に侵襲を与えず核心温度に類似する深部温度の測定可能な深部温度計(テルモCM-210)を用いた調査を行った。対象は悪性リンパ腫の患者で、外来で化学療法を継続的に受けている中高年者とした。深部温度測定は、1対象者につき1回の治療の開始時から終了時までを継時的に測定し、治療2回分の測定を行った。データは治療2回分の平均値とし、分析に用いた。深部温度の測定部位は前額部、手掌部とし、測定用プローブを貼付した。前額部は中枢側の深部温を、手掌部は末梢の深部温を示す。表面温度は前腕部にプローブを貼付して測定した。【結果・考察】分析対象者は6名で、50歳代1名、60歳代3名、80歳代1名であった。1回の治療時間は2時間から4時間であった。調査は2010年12月から2011年1月末までの期間に実施し、測定時の室温は20℃前後、湿度は30%前後であった。測定データは、測定開始時より値の安定した10分経過後からの値を用いた。また、分析対象としたデータは、6名分の平均値の算出可能な90分経過後までを対象とした。測定開始10分後の前額部の平均深部温度は36.01(±0.42)℃、30分経過後は36.14(±0.45)℃、60分経過後は35.99(±0.54)、90分経過後は35.86(±0.58)℃だった。一般的な深部温の平均値36.5~37℃と比較すると、悪性リンパ腫患者の深部温は一般的な値よりも低い傾向にあった。また、測定開始10分後の手掌部35.49(±1.21)℃、前腕部32.62(±0.84)℃であり、いずれの部位においても継時的にみて体温の大きな変動はみられなかった。今後は本結果に基づき、湯たんぽを用いた介入研究を実施する予定であるが、介入研究の実施に際し、臨床研究倫理審査を受け、その承認を得た(広島大学病院 第 臨-230号)ことを追記する。
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