研究概要 |
【目的】大量の抗悪性腫瘍薬による治療を受ける対象者への湯たんぽ貼用による効果を明らかにする目的で介入研究を実施した。【方法】対象は悪性リンパ腫と診断された患者で、標準的化学療法を外来で受けている者とした。同意の得られた対象者に湯たんぽ実施群(A群)と非実施群(B群)の両方を実施した。治療は3週間おきに行われることから、同一の対象者においてA群ならびにB群の試験を1クール分行い、1クール分の休止期をおいた。調査指標として、コアテンプによる前額部と手掌部の深部体温並びに表面温、アンケートによる主観的QOL、CES-D、PSを調査した。また、腋下表面温と治療に伴う症状の継続的な記録を対象者に(体温日誌)依頼した。血液学的検査結果はカルテから抜粋した。調査期間は2011年9月~2012年2月末。【結果】期間内に8例の同意を得、分析対象は5例となった。前額部深部体温はA,B群ともにクール開始時と終了時の温度がほぼ同じであった。アンケート得点比較では、B群で役割機能の低下、社会的機能の上昇、食欲不振の低下、下痢の悪化、QOLの上昇傾向を認め、A群での顕著な変化は認めなかった。体温日誌の平均腋下表面温は、午前は36.4~36.5℃、日中は36.4~36.8℃、夜間は36,4~36.6℃の推移を示した。2郡比較では、日中の平均腋下表面温でクール開始から3週間目において、B群36.4℃に対しA群36.8℃とA群の方が若干高い傾向にあった。体温日誌の症状からは、疲労としびれ感に相違を認めた。血液検査値では、好中球数とIL-2RにおいてB群よりもA群の方に増加傾向を認めた。【考察】アンケートや体温日誌の症状から、B群よりもA群の方が化学療法に伴う副作用症状が少ない可能性あると考えられた。また、好中球数等の増加は、G-CSFによる効果とも考えられた。今後も引き続き症例数を増やした検討を行う。
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