【目的】大量の抗悪性腫瘍薬による治療を受ける対象者への湯たんぽ貼用による効果を明らかにする目的で介入研究を実施した。【方法】対象は悪性リンパ腫と診断された患者で、標準的化学療法を外来で受けている者とした。同意の得られた対象者に湯たんぽ実施群(A群)と非実施群(B群)の両方を実施した。調査方法の詳細は平成24年度に準ずる。調査期間は2011年9月~2013年7月末。【結果】期間内に11例の同意を得、分析対象は10例となった。(1)群間比較:測定開始後10分値と20分値の前額部深部温を比較したところ、AとBの群間で有意差は認めなかったものの、AとB群終了20分値においてB群で体温上昇する傾向を認めた(p=0.074)。B群がA群よりも悪化傾向を示した項目は、「疲労」「食欲不振」だった。(2)群内比較:前額部深部体温「10分値」よりも「20分値」が上昇傾向を認めたのは、A群内治療クール開始時(p=0.005)、B群内治療クール開始時と治療クール終了時(p<0.05)だった。(3)湯たんぽ貼用時間の長短比較:60分>群の平均前額部深部体温は36.0±0.3℃、60分<群は35.7±0.4℃と、60分>群の方が高温だった。治療開始時から終了時にかけて身体症状が悪化あるいは継続した項目は、60分>群では「疲労」「不眠」、60分<群では「疲労」「嘔気」「痛み」「不眠」「食欲不振」「便秘」だった。白血球数の変化率において、A・B群ともに60<群では治療クール2週目に50%増加した。【考察】湯たんぽ貼用時間の長短比較の結果より、湯たんぽ60分以上貼用群で、白血球数早期回復、嘔気や食欲不振症状の改善、痛みの悪化抑制の可能性が示唆された。湯たんぽ貼用の効果を得るためには、1日60分以上の貼用時間が必要ではないかと推測された。
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