研究概要 |
平成22年度は継続中の検証研究を遂行することを第一の目的とした. 1)筋注部位皮下組織厚調査として,健康成人223名に対し調査を行った.前年度までの調査の330名の平均値と大きな差はないが,今後すべてのデータを合わせ,改めて平均値,分布等を明らかにし,注射針刺入深度の目安を決定する予定である. 2)筋注部位皮下組織厚簡易アセスメント機器の開発は,1)で得られた結果をもとに,アディポメータの改良を行う予定である。 3)薬効成分の血中濃度の推移からみたZ-track法の検討としては,実際に臨床でZ-track法で施行されることがある統合失調症治療薬のハロマンス[○!R]注50mgを,実験用動物のCrj : Wister系雄性ラットの大腿部に筋注し,通常法とZ-track法群の血中濃度を比較した.その結果,Z-track法では投与初期が高く,その後の変動も大きいことが明らかになった. 4)離床での筋注部位の肉眼的所見の縦断的観察としては,精神科外来で3ヶ月間,筋注の全数調査を行った.その結果,全筋注事例の1割に発赤,疼痛,腫脹,硬結等の注射部位反応が出現していることが明らかとなった.今後,注射部位反応が確認されたケースの追跡調査を行う予定である. 筋注時にZ-track法を用いるべきかについては,これまでの研究で明らかにした,通常法と比較しても薬液の皮下への漏れの程度に差がないこと,今回の実験結果である投与後の薬物血中濃度の不安定さから考え,Z-track法を用いる必要性はなさそうだと言えた.つまり,筋注で薬液を漏らさず筋肉内に確実に投与するためには,特別な方法論より針の刺入深度を的確に見極めることが重要であることが示された.したがって,やはり,これまでの研究成果を統合した注射針刺入深度の決定のための皮下組織厚簡易アセスメント機器の開発が期待されることを確認できた.
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