研究概要 |
前年度より以下の研究を継続して行い,1),2)の成果は最終目標であるガイドブック作成の原稿に活用した.また,3)については,現在機器の製作を検討中である. 1)薬効成分の血申濃度の推移からみたZ-track法の検討 Crj:Wister系雄性ラットを用い,臨床でZ-track法で施行されることがあるハロマンス[○!R]注を,通常群とZ-track法群に分けて筋注し,ハロベリドール血中濃度を測定した.その結果,通常法と比較し投与初期の血中濃度が低いこと,その後の変動が大きいことが明らかになり,Z-track法を用いる必要性は見出せなかった. 2)同一部位への頻回注射による硬結に関する検討 白色種雄性ウサギを用い,ペンタジン[○!R]注射液15の皮下注・筋注を4回/日行い観察した.その結果皮下注でも筋注でも注射部位に強い傷害があったが筋の傷害は皮膚表面上からは観察が難しかった.したがって,組織に傷害を及ぼすことを前提に,連続的に注射が必要な場合には,注射可能な部位を複数確保し同一部位をできる限り避ける重要性が明らかになった. 3)筋注部位皮下組織厚簡易アセスメント機器の開発 筋注部位の皮下組織厚をアディポメータで測定した上腕部背面の皮下脂肪厚からアセスメントできる計算式を明らかにした.今後,計算式を用いず皮下組織厚がすぐ分かる簡易アセスメント機器を製作する予定である. 筋注手技のエビデンスに関して毎年学会で新たな知見が報告されているにも関わらず,臨床現場にはなかなか伝わらない現状がある.筋注研究者が協力して最新の研究成果に基づくガイドブックを作成し,それが臨床で活用されれば,筋注に関する看護師の不安や困難の解消は勿論,事故防止が徹底されひいては患者の利益につながると考える. また,筋注における針の刺入深度は経験則に頼ってきた長年の課題であり,皮下組織厚簡易アセスメント機器があれば,経験のない学生あるいは経験の浅い新人看護師も根拠を元に学習できる等,広く活用できると考える.
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