壊死性抗がん剤の血管外漏出時のケアの有効性について検討した.日本国内では,壊死性抗がん剤が血管外漏出した時のケアとして,ステロイドおよび局所麻酔薬の溶解液を漏出部周囲に皮下注射している.しかし,この処置は有効性が明らかになっていないため,海外のガイドラインでは禁忌とされている. 6週齢雄性マウスの背部皮膚にドキソルビシンまたはビンクリスチンを投与した対照群と,ステロイド局所注射液(水溶性プレドニンを生理食塩液にて溶解)を周囲に注射したステロイド群を比較した. ドキソルビシンおよびビンクリスチンの両抗がん剤とも,投与直後は全ての群に腫脹がみられ,3時間後は投与部位に白色の変化がみられた.ビンクリスチンは両群とも1日目までは皮膚傷害はみられなかったが,2日目以降,皮膚傷害がみられた.皮膚傷害は3日目以降5日目までは対照群の方に多くみられたが6日目,7日目は局注群と同程度となった.ドキソルビシンは,1日目より皮膚傷害がみられ,局注群の方が強くみられた.リアルタイムPCRにて7日目のTNF-αの発現量を測定したが,対照群とステロイド群で変わりなかった. ビンクリスチンの血管外漏出に対するステロイド局所注射は早期の皮膚傷害が軽減する傾向にあったが,6日目以降は同程度であったため,長期的な効果は低いと考えられる.ドキソルビシンに対するステロイド局所注射は,肉眼的な皮膚傷害を軽減させるとの先行研究があるが,本研究では皮膚傷害を悪化させる結果となった.
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