熟練した開業助産師Mによって行われる特殊なスキンケア方法である圧迫振動法の効果を、組織学的な面から解明することを目的に本年度の調査を実施した。 調査はM助産院にてスキンケアを目的に来院された対象のうち、対象となる乳児の保護者に研究内容の説明を行い、研究の同意が得られた生後30日から120日までの健康な皮膚をもつ乳児2名と乳児湿疹をもつ乳児4名を対象とした。気温24℃、湿度60%の環境下で20分間かけて皮膚圧迫振動洗浄法を実施した。その後、残り湯から落屑を含む湯を採取し、チューブに入れて遠心分離を行い、チューブ底にたまった落屑量を肉眼的に比較検討した。また、採取した落屑をスライドグラスに塗抹した後、パパニコロウ染色にて染色し、細胞を比較検討した。 調査の結果、チューブ底にたまった落屑量に関しては、乳児湿疹をもつ乳児のうち最も丘疹の多い1名のみ落屑が多量に見られたが、その他の乳児湿疹をもつ乳児と健康な皮膚をもつ乳児では同程度の落屑量であった。パパニコロウ染色を行った落屑の細胞については、乳児湿疹をもつ乳児と健康な皮膚をもつ乳児で比較を行ったところ、細胞面積、細胞数に関して、大きな違いは見られなかった。 今回の調査における乳児湿疹をもつ乳児の皮膚状態は、白色の丘疹が前額部、または胸部の局所にあるのみであった。このことから、洗浄によって落ちる全身の皮膚の落屑を採取する今回の調査では、組織変化の生じていない部位の細胞の混入が増えたことで、健康な皮膚をもつ乳児と乳児湿疹をもつ乳児の組織の間に細胞面積、細胞数に違いが生じなかったと考えられる。一方、乳児湿疹をもつ乳児の中でも最も丘疹が多かった乳児に関しては、チューブ底にたまった落屑量が多かったことから、皮膚圧迫洗浄法は湿疹や皮膚状態が悪化した皮膚をもつ乳児に対しては、乳児湿疹の原因である皮膚に蓄積した角質や皮脂などの汚れを効率的に除去する可能性が示唆された。
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