熟練助産師Aが実施する特殊な皮膚洗浄法は、皮膚トラブルが主訴で来院した乳児の約9割を1週間以内で完治させていた。そこで熟練助産師Aが実施する皮膚洗浄法の組織学的視点での効果を解明することを目的に湿疹の発生範囲を湿疹なし、顔面のみ、全身の3群に分け、うち湿疹のある2例について一般的な沐浴と皮膚洗浄法の両方を実施し、効果の違いを比較した。 対象は、生後30日から120日までの健康な皮膚をもつ7名と乳児湿疹をもつ7名とした。湿疹のある対象のうち顔面のみに湿疹が生じたものは5名、全身に湿疹が生じたものは2名であった。湯量14Lを用いてガーゼと固形石鹸を用いて約20分間かけて皮膚洗浄法を実施した。その後、残り湯から落屑を含む湯を採取し、チューブに入れて遠心分離を行い、チューブ底にたまった落屑を採取した。採取した落屑をスライドグラスに塗抹した後、パパニコロウ染色にて染色し、カメラで撮影を行い、画像を検討した。一般的な沐浴法を行った2例については、皮膚洗浄法実施前に10分以内で一般的な沐浴法を実施し、残り湯を採取し、皮膚洗浄法時と同のの方法で染色・撮影を行った。 その結果、湿疹範囲の違いにおける細胞数(100倍1視野中)について比較を行ったところ、健康な皮膚をもつ乳児11.0±23.0、顔面のみに湿疹が生じた乳児15.0±53.4、全身に湿疹が生じた乳児36.5±23.6となり有意差を認めた(p<0.01、Kruskal-Wallis test)。一般的な沐浴法と皮膚洗浄法の違いによる細胞数の比較では、一般的な沐浴で8.0±9.0、皮膚洗浄法で49.0±78.9となり有意差を認めた(p<0.01Mann-Whitney Utest)。 今回の調査では、湿疹範囲が広がるほど残り湯内に含まれる細胞数が多数みられたこと、皮膚洗浄法では一般的な沐浴法に比べ残り湯内に含まれる細胞数が多く見られたことから、皮膚洗浄法は病変によって皮膚に蓄積した角質を効率的に除去する可能性が示唆された。
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