研究目的:黄色ブドウ球菌は人間の10~40%の鼻腔などに定着している常在菌である。現在、院内感染の主要菌であるMRSAもまた黄色ブドウ球菌の一種である。しかし、最近では市中でもMRSAが見つかっており、単独の病院内の接触感染予防だけでは拡大防止が難しい。耐性菌対策は複数の病院や施設、入院患者だけでなく外来患者も含め、地域で抗生剤のマネジメントなどを行う必要がある。以上のことから、本研究では外来患者に焦点をあて、「慢性疾患をもつ外来患者はMRSAの保菌率が高い」という仮説を立て、検証した。 方法:MRSA保菌状況について、滅菌綿棒を滅菌生理食塩水で湿らせ、両鼻腔前庭の鼻翼側を5往復させ検体を採取した。採取した検体は株式会社SRLに依頼し、クロモアガーMRSAスクリーニング培地(関東化学)にて36.0℃で48時間培養したのち、MRSAのコロニー数をカウントした。また、どのような患者が保菌しているのかを調べるため、聞き取りによるアンケート調査を行い、既往歴、通院歴について本人の了承を得てカルテより情報収集をした。 結果:検体採取およびアンケート調査に協力が得られたのは75名であった。このうち検体からMRSAが検出されたのは0名であった。対象がもつ現在治療中の疾患は糖尿病49名(65.3%)、高血圧症48名(64.0%)、脂質異常症40名(53.3%)であった。また、全体の90.6%に入院歴があった。
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