研究概要 |
背景:臨床場面では身体が虚弱となった患者がベッド上で半座位(ファーラー位)となることがある.そのため,ファーラー位では身体にとって低負担であることが要求される.しかし,どのような半座位姿勢であれば低負担となるのか明らかとなっていない.本研究では,半座位中の体幹部の姿勢に着目し,心血管系への負担の少ない背上げ姿勢を検討することとした。また今回は特に自律神経による循環調節系に着目し検討することとした.方法:実験用ベッドに着座した状態で心電図と連続血圧を記録した。計測条件として,体幹30度傾斜姿勢,体幹60度傾斜姿勢,上部体幹屈曲姿勢(上部体幹部30度・下部体幹部30度)の3通りを設定した.すなわち上部体幹部ボトムが30度と60度の時は,体幹は真っ直ぐであり,60度の方がより起立姿勢といえる.上部体幹屈曲姿勢は上部体幹(胸部)のベッドボトムを60度,下部体幹(腹部・骨盤部)を30度の傾斜角としており,胸郭が軽度屈曲した姿勢である.心電図・連続血圧よりシーケンス法による圧受容器反射感受性(BRS)を算出した.BRSは迷走神経性の心血管系の調節を反映するもので,身体が休息状態にあるときにBRSは上昇する.結果:BRSは体幹60度傾斜姿勢で最も低くなり,上部体幹屈曲姿勢で最も高くなった.なお全ての条件間で統計学的有意差が認められた.結論:上部体幹軽度屈曲位の半座位では循環器系にとって休息しやすい状態となる可能性が示唆された.
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