平成24年度は、倫理的配慮のもと、片麻痺手を持ち保清に介助を要する入院療養中の患者を対象に麻痺手不快臭の増悪因子の増殖状況と不快臭の発生状況の経時的な検証と、これまでに得られた健康成人の手掌部環境の結果をふまえ、明確になった増悪因子を除去するための効果的なケア方法や頻度の検討に取り組んだ。 療養型病院に入院中の片麻痺手を持つ患者を対象に、両手掌部の細菌数・ATP値・発汗量・におい・表面温湿度・皮膚pH値を石けん手浴の前後、経時的に測定した。石けん手浴直前の麻痺手の手掌部は健手に比べて細菌数・ATP値・皮膚pH値が高く、発汗量では両手掌部に差がみられなかった。また、拘縮のある麻痺手の手掌部のにおいは健手に比べて高い傾向がみられた。細菌数・ATP値・皮膚pH値・においの経時的な変化では、石けん手浴直後に低値を示し、24時間後、48時間後と徐々に増加し、72時間後には石けん手浴直前と同程度であった。麻痺発症後の期間が長いほど細菌数・ATP値は健手に比べて麻痺手で高値を示し、ADLが低く拘縮が強いほどにおい・手掌部表面湿度・pH値が高値であった。以上のことより、麻痺手不快臭の発生は麻痺手の拘縮状態・表面湿度・pH値に関連があることが明らかになり、石けん手浴を2~3日に1回以上行うことで不快臭の発生を抑制できることが示唆された。
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