研究概要 |
本研究は,新卒看護師の職場適応過程を明らかにし,新卒看護師の職業継続を支援することを目的としている.当該年度では,これまでの先行研究の検討と,新卒看護師を対象とした心理状況の変化について縦断的な手法を用いた調査を実施した.先行研究の検討では,これまで実施されてきた新卒看護師への支援の方法および内容についての整理し,さらに個人のキャリア形成に必要とされている具体的な支援方法について検討した.新卒看護師の心理状況に関する縦断的調査では,心理状況の中でも,個人と職業に対する意識や行動に影響すると考えられる「自己効力感」および「精神的健康度」と「離職意思」について調査し,その関連について分析した.縦断的調査では,入職直後,6月,9月,翌年2月の4回の縦断的調査を実施した.すべての調査に参加した対象者は22名であり,統計学的な分析には限界があったが,一定の傾向を確認することができた,新卒看護師は,入職2~3ヶ月目には,入職後急激に自己効力感は低下し精神健康度が悪化する傾向にあった.さらにこの変化とは反比例して,離転職意思が高まっていた.その後入職半年以降は,精神的健康度は改善傾向を示すものの自己効力感は低下したまま安定し,離転職意思も高い状態で経過する傾向を示した.このことから,新卒看護師は,精神的健康度の改善だけでは,看護師に対する自信や確信を取り戻すことにはつながらない傾向にあることがわかった。特に入職半年後には,精神的健康度と職業継続に関する内容は関連していないことも考えられた.新卒看護師の支援は,入職半年を節目として,内容を検討することが必要であり,特に精神健康度に関する関りは,早期の段階で必要であることが示唆された,今後は,早期の段階での精神的健康度の改善が,その後の職場適応過程にいかなる影響を与えるのか検討することが課題である.
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