研究課題/領域番号 |
22792166
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研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
恒松 佳代子 熊本保健科学大学, 保健科学部, 講師 (20300486)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 看護師 / 道徳的志向 / 倫理的葛藤 / ケア / 正義 |
研究概要 |
平成24年5月から平成25年3月末にかけて、臨床看護師の葛藤について調査・分析を行った。臨床現場で葛藤の経験がある看護師10名を雪玉式標本抽出法で選択し、半構成面接法で調査を行った。調査内容は、研究者が作成した日本語版「実生活の道徳的葛藤と選択のインタビュー」の質問項目を使用し、GilliganらのReader’s Guidに沿って分析した。平成25年の3月末において、対象10例のうち6例の分析を終えている。 対象6例の看護師が葛藤に遭遇した時の道徳的志向について、GilliganらのReader’s Guidに沿って3パターンのコード化を行った。その結果、『志向の存在』では「正義とケアの両方」4例、「正義のみ」2例であり、『優位な志向』では全事例が「正義優位」であり、『自分自身と一致する志向』では「正義と一致」5例、「両方とも一致」1例であった。対象に表現された志向を概念別に見ると、ケア志向の概念は合計8つの表現があり、「他者の幸福」が最も多い3例で表現され、患者や家族に有益な援助をしたいという内容であった。正義志向の概念は合計11の表現があり、「役割」が最も多い6例に表現されており、医師との役割不平等や専門職としての役割遂行に関する内容であり、専門職としての実践を左右する重要な内容であった。また、ケア志向と正義志向の表現は葛藤場面により異なっており、ケア志向は看護の対象となる患者や家族の登場が少なければ表現されていなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は、対象10例の調査および分析の予定であったが、調査を行った10例のうち4例の分析が終了していない。その理由としては、対象のうち男性看護師の調査協力が得られず平成25年3月末まで調査を実施したため、全ての分析を年度内に終了できなかった。 また、本研究で使用しているGilliganらのReader’s Guideの有用性を確認するための先行研究に関する文献の分析は、学会誌へ投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に分析終了した研究結果は、平成25年6月8-9日に鹿児島で開催される日本看護倫理学会第6回年次大会で報告する。次年度は、この報告内容に残り4例の分析結果を追加して研究の総括を行う。 本研究課題の研究成果をもとに、今後は臨床現場によって看護師のケア志向と正義志向の表現が異なるかについて見い出すことを考えている。各臨床現場に特徴的な看護師の道徳的志向を明らかにし、看護師の倫理的葛藤の解決へとつなげていきたい。
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