研究概要 |
過去10年間程度の前立腺がんに関する和・英文献を収集・精読し,近年のトレンドやその傾向を再認識した.有用な文献として,まずは,性機能障害に着目し,性機能障害が発生し得るがん(膀胱がん,精巣がんなど泌尿器系悪性腫瘍や大腸がんなどの骨盤内悪性腫瘍)や鬱病などの精神疾患による心因性の性機能障害についての文献を概観した.また,男性特有のがんだけでなく,乳がんや子宮がん等の女性特有の疾患を前提としたセクシュアリティに関する研究論文も概観した. 以上より,前立腺がん患者のセクシュアリティに関する国内外における研究の動向と課題を明らかにするため,収集した文献を元に,研究デザイン,方法,内容の分析を行った. その結果,分析対象論文は,国内が8件,国外が11件であり,量的研究が47.4%,質的研究が42.1%,量質併用が10.5%を占めていた.研究デザインは,因子探索研究が最も多く,52.6%と半分以上を占めていた.研究時期は,治療後が61.9%と最も多く,治療中は1件(4.8%)のみであった.研究内容は,セクシュアリティを排尿機能などと並列で扱い,身体状態やQOLの一部として捉えて,研究対象としているものが半数以上であり,セクシュアリティを単独で対象としているものは3件(15.8%)であった.その他は,パートナーとの相互作用として捉えているもの等であった.以上の結果より,前立腺がん患者におけるセクシュアリティの研究は,国内外共に希薄であり,量質双方の充実が求められることが示唆された.また,セクシュアリティは,そのもの自体に身体的,心理社会的といった様々な問題が含有され,派生していくにも関わらず,多くの研究において,身体状態やQOLの一部として捉えられており,焦点化されている研究は少ないことが分かった.
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