生体肝移植ドナーが自らの手術に関していかに情報収集を行い、その情報からいかに手術後に活かされたのかを記述しその背景を明らかにする。【方法】研究参加者は、生体肝移植ドナー経験者10名。「生体肝移植」という治療方法が必要と説明が受けてから現在までの体験について半構成的面接を行った。面接で得られたデータをGeertzの提唱する「解釈的人類学」の分析方法に基づいて分析を行った。本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得て行った。【結果・考察】入院前の情報収集をした者の情報源は全てネットで、内容はレシピエントに関するものだった。ドナーの情報は自分が望むような情報収集ができていなかった。情報収集をしなかった者の背景には、「ドナーになる気持ちが揺れるわけにはいかない」「気が動転して探す気が起こらなかった」というものだった。さらに、入院後の医師からの説明は、「重要なのはレシピエントが助かる確率」「自分は死んでもかまわないと思った」と述べており、生死に関わる情報のみが記憶に残り、創の大きさや形、ドレーンの存在、合併症についての説明の内容は記憶にないと語った。術後、傷の大きさや形、ドレーンの存在でショックを受けたと語った。そして、退院後に辛い身体症状があったとしても、「自分が決めたことだから引き受けるしかない」と語った。これらのドナーの状況を配慮した、情報提供やインフォームドコンセントの必要性が示唆された。この研究成果より、日本国内での「独立したドナー権利擁護」の必要性を確認し、倫理学の専門家の意見を踏まえモデル案の構築作業を行っている。
|