本課題は、生活文化を含む離島地域の文化的文脈における介護者のQOL及びケア関連行動を質的に探求し、抽出した特性及びQOL尺度で構成した質問票による調査から介護者QOLの影響要因を明らかにすることである。ここでの介護者とは、予後不良な患者(余命を限定しない)を在宅・特別施設・病院等で介護する家族及びキーパーソンとした。 平成22年度(1年目)は、計画に沿って質問票及び面接ガイドを作成し、家族介護者5例(遺族1例含)の面接調査及び質問票調査を実施し、以下のような成果を得たので報告する。 1.質問票の作成:許可取得後作成した日本語版QULLTI-F(カナダMcGill大学開発中の介護者QOL尺度)18項目、SOC尺度13項目及び介護者側の見解及び環境因子などの20項目で構成された自記式質問票を作成し、試行した。 2.質問票調査結果:現在までに回収済みの3件について総体的に分析し、対象の特徴を概観した。「環境」、「介護者の健康状態」、「患者の健康状態」、「介護者の信念」、「介護の質」の5つのサブカテゴリー得点は先行研究結果より低く、「社会人間関係」、「経済的不安」得点は3件ともに先行研究結果よりも高かった。3件のQULLTI-F総得点は7.5~8.7と先行研究結果の6.7点以上であり、比較的高いQOLを示した。また、3件のSOC得点は59~63点であり、先行研究が示す平均的得点範囲より高いか若しくは範囲内であった。 3.面接結果:逐語録より、介護者が自分の介護体験やそれらに伴う変化をどのように捉えているかを概観するために、体験の意味の固まりをつくり仮概念化した。特にQOL尺度のサブカテゴリー得点が先行研究得点よりも高い、若しくは低い項目に関連する内容や、尺度上のカテゴリーにない独自の見解に着目した結果、「島の病院での症初期診断と治療への後悔」、「将来的な状況の悪化(再発や死)に対する心構え」、「昔の介護体験の失敗を活かす」、「介護者の努力に対する周囲の理解で軽減される介護上の心理的負担感」、「被介護者の現状理解や受容」、「大変な状況下でも小さな楽しみを見つける」、「自分にできる(範囲の)ことを精一杯考えて行なった日常生活上の心遣いが被介護者に受け入れられた時の喜び」、「被介護者の頑張る姿」、「神仏へ祈る」などが抽出された。 4.課題:調査を継続し対象数を増やすと同時に、質的データと質問票調査結果の統合的な分析を行なう。
|