研究課題/領域番号 |
22792186
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山口 智美 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (60360062)
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キーワード | ターミナルケア / 離島地域文化 / QOL / 介護者 / 看護文化 |
研究概要 |
本課題は、生活文化を含む離島地域の文化的文脈における介護者のQOL及びケア関連行動を質的に探求し、抽出した特性及びQOL尺度、SOC尺度で構成した質問票による調査から介護者QOLの影響要因を明らかにすることである。ここでの介護者とは、悪性疾患患者を在宅・特別施設・病院等で介護する家族及びキーパーソンとした。 平成23年度(2年目)は、日本語版QOLLTI-Fの妥当性を検討すると同時に、本調査を開始した。年度終了時までに回収した85件分のデータについて、途中経過・成果を以下に報告する。 1.日本語版質問票の妥当性の検討:許可取得後に作成した日本語版QOLLTI-F(カナダMcGill大学開発中の介護者QOL尺度)の18の質問項目において、クロンバックのα信頼性係数は0.75~0.8以上であり、日本語版尺度の一定の妥当性が担保された。 2.質問票調査結果:自記式質問票はQOLLTI-F尺度18項目、SOC尺度13項目及び介護者の見解・環境因子・基本属性20項目で構成された。現在までに回収済みの85件について分析した結果;家族介護者の7割が配偶者、8割が女性、かつ介護者の6割が60歳以上の高齢者だった。被介護者の4割はPS4から5と日常生活上介助を要する身体状況であり、介護者の4割は他の介護協力者がいなかった。また、6割は介護の役割を他者へ委譲できないとした。介護者の4割は年間所得300万円以下で、6割が無職であった。介護者の2割が介護をはじめてから体調を崩したとし、4割は自分の健康管理に留意するようになったとした。7割以上が介護をはじめてからの家族関係の変化を、家族の協力や絆の深まりなど肯定的に捉えていた。また、他者との関係性の変化については4割が否定的であり、2割が肯定的に捉えていた。高齢者になるほど介護役割を他者へ委譲できないとし(p<0.05)、高齢介護者の介護の抱込みが危惧された。QOLLTI-F総得点平均は5.7点(先行研究結果基準6.7点)であった。SOC得点の平均は50点であった。QOLLTI-FとSOC得点には有意な相関関係が示された(p<0.01)。 4.課題:調査を継続し対象数を増やすと同時に、QOLLTI-Fに影響する要因を明らかにするために更に分析を行う。また、質的データと質問票調査結果の分析と統合に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗状況が当初計画に沿っていること。また、調査への協力が得られ対象者数は制限されつつも順調にデータが回収できていること。影響要因を明らかにするという目標達成については、現時点で言及は難いしいが、継続的に取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
計画の進捗は概ね順調であるが、被験者・被験者へのアクセスが限られるため、最終的に対象者数が制限される可能性が否定できない。限られたデータの中でも他国データとの比較など、オリジナリティーを確保しながら、成果を社会に還元する。
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