従来の保健看護分野のQOL研究は患者側に焦点化され、地域・在宅での慢性疾患及び終末期ケアの重要な担い手で家族介護者のQOLに関する研究は不足している。本調査は超高齢・在宅死の時代を迎える本邦の地域文化コンテクスト中で捉えられるがん患者家族介護者(13例)としての日常生活、経験、思い等QOL構成要素を質的に探求し、同時にQOLLTI-F(Quality of Life in Life Threatening Ilness-Family Carer version) の日本語版作成と使用可能性試験及びSOC尺度(ストレス対処能力測定尺度)との相関試験を目的に156例に質問票調査を実施した。18の領域と102の副領域が抽出され、QOLLTI-F とSOCの強い相関関係(p<0.001)が示された。QOLLTI-Fは内容的妥当性、表面的妥当性、先行類似尺度との比較において潜在的に活用可能性のある尺度であるが、今回の本対象での因子分析による妥当性は必ずしも十分とはいえず、今後の継続試験及び日本の文化的特異性を示す質的分析結果の応用が必要である。 ・対象の概要:入院中が6割以上、在宅が3割だった。8割以上が既婚者、女性だった。半数以上が60歳以上であり、老老介護の現状が示唆された。 ・質的分析結果:18の領域「」の内、QOLLTI-Fの領域と比較して日本人対象に特徴的なものは;「先の事に対する不安、心配、やり残したこと」、「予後や死について分かち合うこと」、「介護者の生き方としてのケアと患者への思い」、「家族・周囲の理解と感謝」、「ケアを受け入れられ、感謝される」、「介護の継続を支える患者の生きる姿」、「社会的役割としての介護」、「患者と共有してきた過去を含めてケアする」、「他者への気遣い」、「社会的支援・資源」、「心の空間づくりと切替え」、「祈る」だった。
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