乳がん手術治療後患者のリンパ浮腫発症予防のための患者教育の現状と課題、継続的支援の内容を明らかにし、入院時から退院後における継続的なセルフケア支援プログラムの示唆を得るため、本年度は文献検討、乳がん手術療法における患者教育の現状および継続的支援に関する実態調査を行った。文献検討では、乳がん、リンパ浮腫に関する過去10年間(2000~2010)の文献検討を行い、40文献を分析した結果、2008年以降リンパ浮腫発症予防に関連する文献が増加しており、リンパ浮腫発症予防のための自己管理支援に関する知見は、リンパ浮腫に対する情報提供、心理的支援、早期発見、継続的支援であった。 これらの結果をもとに、リンパ浮腫発症予防のための患者教育の現状と、継続的支援を行っていく上での問題点を明らかにし、リンパ浮腫発症予防のための継続的支援における看護職の役割を考察するため、実態調査を実施した。全国47都道府県の、病床数200床以上で日本乳癌学会認定・関連施設になっている627施設のうち、該当施設の看護部長に研究依頼書を送付し、研究同意の得られた、乳がん周手術期患者のリンパ浮腫に最も関わっている看護師を対象とし、無記名自記式質問紙調査を行った。その結果、リンパ浮腫発症予防の教育を行っている施設は、回答を得られた施設のうちの85.3%であり、患者教育を行っていると回答した施設のうち、入院中に行っている施設は98.7%、退院後の翌月以内に行っている施設は37.3%であった。今回の調査では患者教育の実施率は高かったものの、その多くが入院中のみの患者教育に留まっていること、施設や実施時期により教育内容も異なっていることが明らかとなり、乳がん患者の治療過程を見据えた教育内容の充実や継続的支援の在り方についての検討、教育に携わる看護師に対する教育の機会や教育内容の充実の必要性が示唆された。
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