本研究の目的は,前立腺がん患者の治療法に対する意思決定過程を支援する看護介入プログラムを開発することである。前立腺がんの治療は,たとえ同一の臨床病期であっても,患者の年齢や期待余命,患者の信念や希望などにより,様々な選択肢がありうるため,治療法の意思決定においては考慮すべき事項が複雑に絡み合う。治療法の選択はその後の生き方やQOLとも強く関連するため,患者自身の価値観に一致した納得できる治療選択をする必要がある。しかし,放射線療法に対する専門的な知識をもつ看護師が不足しており,前立腺がん患者の治療法の意思決定過程における支援は十分にできていないのが現状といえる。外照射療法は,計画された治療を予定通りに終了することが重要であり,外照射療法がもたらす急性有害反応の予防と出現した苦痛な症状に対する患者のセルフケア能力を高めることが必須条件となる。そのためには患者が十分に納得した上で外照射療法を選択することが重要である。以上より,前立腺がん患者の治療法に対する意思決定過程を支援する看護プログラムを開発することは極めて重要である。 プログラム開発の基礎調査として,平成22年度から24年度に外照射療法を選択した前立腺がん患者31名とIMRTを選択した前立腺がん患者25名に対して面接調査を実施した。分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて行った。結果,外照射療法を選択した前立腺がん患者の意思決定過程は「冷静な受け止め」に始まり「医師からの治療選択肢の提案に対する納得」「医師による十分な情報を得たうえでの治療選択権の所持」「これから受ける治療と再発・転移時の治療との関連に対する気がかりの払拭」「何があっても後悔しないように人間的に信頼できる医師による治療を受けることへの強い意志」などであることが明らかになった。 平成25年度は基礎研究の結果を基にプログラムの開発に着手した。
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