本年度の研究目的は、クリティカルケア領域における心理的危機にある患者・家族への看護介入の実態を参考としたシミュレーション教育プログラムの作成・実施、およびその有効性の評価とした。問題定義の段階として重要なニーズ・アセスメントに加え、学習者分析のための実態調査結果から、その要素を抽出した。昨年度に実施した質問紙調査を分析するとともに、クリティカルケア領域に勤務経験のある看護師2名を対象に、半構成的面接調査を行った。基本的属性や危機介入の学習経験と危機介入の基本的アプローチとの関係性を明らかにした。また、危機介入の基本的アプローチとして、「危機に関する要因のアセスメント」「危機をもたらす出来事から遠ざける援助」「危機に対する適切な認識を促す援助」「危機に対する情緒的反応への対応」「本人自らの問題解決への援助」「サポートシステムの強化」の各項目における具体的な看護介入内容を明らかにした。傾聴や観察などによる情報収集、各種の危機理論および危機モデルの活用、医師など他職種も含めたチームでの取り組み、繰り返しの具体的な情報提供、タッチングなどによる身体的接触、身体的安楽をもたらす援助、心理療法士やリエゾンナースによる介入などが抽出された。これらの結果および先行研究を参考に、ガイドラインの作成およびシミュレーションシナリオの作成を行った。教育プログラムを作成し、クリティカルケア領域を想定した場面設定を行い、看護学生3名を対象としてプレテストを行った。プレテストで得られたデータについては、現在も分析中であり、教育プログラム内容の見直しおよび精錬を行っている。
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