頭頸部がんに対する放射線治療は照射野に舌、唾液腺および口腔粘膜を含まざるをえないため、味覚障害・口腔内乾燥・口腔粘膜炎といった感覚器系の有害事象が累積照射線量毎にその症状を変化させながら患者の食事摂取に大きな影響を及ぼしている。そこで22年度の調査では、放射線治療により有害事象を抱える頭頸部患者に対して、従来の食事提供群を対照群、研究者の開発した食事提供群を介入群として、対照群と介入群における官能評価得点を比較し、有害事象を抱える患者の良好な食事摂取を促すためのケアモデルを開発することを目的とした。まず研究者は、有害事象を抱えながらも患者の良好な食事摂取を促すための具体的な調理に着手した。調理および患者への提供は、累積照射線量が20Gy(E)において「本人の食事の好みを取り入れた味・温度・食感ともメリハリのある風味豊かな食事」、30Gy(E)は「本人の食事の好みを取り入れつつ、滑らかで咀嚼しやすい食材を刺激の少ない味付けとし、風味や季節感などで食べやすくした食事」、50Gy(E)は「飲み込みやすく、口溶けのよい食感で、味だけでなく、温度、匂いでの刺激を抑え、風味や季節感などで食べやすくした食事を食べやすい時間帯に提供する」こととして実施した。現在、対照群と介入群における官能評価得点(食感・味付け・匂い・温度・食形態・嗜好性・献立全体・食事を提供する時間帯)を比較・検討している。今後は、当該調査を継続するとともに、ケアモデルの普及効果を施設側の実用可能性、食欲・食事摂取量の増減、患者満足度の視点から検証する予定である。
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