研究概要 |
一般病棟における終末期看護の実践において、心理社会的なケアや患者を看取る家族に対する支援は十分に実践されていない現状があり、継続教育による人材育成は緊急の課題である。平成22年度は以下の3点を中心に研究を進めた。 1.看取りケア実践教育プログラムの内容と展開方法の決定:これまでの研究成果に基づき、家族アセスメント方法(家族看護の基礎知識を含む)、症状コントロールに関する知識を理論やモデルと関連付けながら学習する5回構成の教育内容とした。学習方法においては、グループワークや事例発表会、専門看護師への相談などを取り入れ、実践的内容とした。また、同じ病棟メンバーでグループ編成し、プログラムに取り組む形式とした。 2.教材作成:一般病棟においては、家族アセスメントが十分に浸透していない現状があることから、一般病棟での使用を想定した家族アセスメントシートを作成した。家族システム看護理論を基盤とし、家族の発達段階と課題、円環的関係性を中心としたシートを作成した。 3.看取りケア実践教育プログラムの実施:2010年6月~7月にプログラムを実施した。パワー分析に基づき、対象者数は25名とし、5病棟から平均5名ずつ対象者を選定した。評価ポイントは、介入前、直後、2ヶ月後の3時点とした。評価指標は、自作の看取りケア尺度(吉岡ら,2009)、終末期ケアに対する態度、集団への態度を測定する既存尺度に加え、看取りケアに対する自信、知識の程度、チームに対する認識などを問う項目を設定した。分析の結果、看取りケア実践能力、自信、知識については、直後に有意に上昇し、2ヶ月後も維持されていた。態度についても、元々高水準にあった態度が直後に有意に上昇し、2ヶ月後も介入前の水準を保っていた。これらのことから本プログラムは、看取りケアの実践能力の向上に寄与する継続教育プログラムであることが示唆された。
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