がんの治療法の進歩に伴い、がん患者は長期間の生存が可能となった。同時に初期治療が終了し、何年も経過してから、骨転移が生じるケースもみられるようになった。がんの骨転移は患者のADLを低下させ、患者が望む場所での療養を困難にする。特に転移性脊椎腫瘍患者の場合、疼痛だけではなく脊髄圧迫症状が出現し、結果としてADL障害をきたすケースも少なくない。病的骨折や転倒をきっかけとして脊髄損傷を起こすリスクも高くなるため、速やかな対応が求められる。 これまでの調査から、転移性脊椎腫瘍患者は、日常生活動作を繰り返す中で疼痛や麻痺を自覚し、重症ではないと思いながら病院に受診したところ、そのまま入院・安静に至るケースも少なくなく、突然の入院・安静・加療に戸惑うこと、骨転移を起こす可能性があることを知らなかったことなどが明らかとなっている。転移性脊椎腫瘍の存在が明らかになると、手術療法か放射線療法によって骨の支持性が得られるまで入院治療が必要となるが、乳がん、甲状腺がん、腎がんなどの原発がんの治療が終了し、その人らしい生活を取り戻した矢先に転移性脊椎腫瘍であることがわかる場合も少なくなく、患者は突然の生活状況の変化に戸惑い、治療中に心理的な負担を感じているケースも多かった。また、脊椎の脆弱性に戸惑いながら、どこまで活動性を高めてよいのか迷うこと、家族もどのように対処したらよいのか判断が難しいことがわかり、生活の再構築のためには多職種による支援が必要であることが明らかとなった。また、QOLを測定したところ、ADL障害とともにQOLも低下している状態であることがわかった。今後は、転移性脊椎腫瘍を扱っている施設で、それぞれの専門職種がどのようなケアを提供しているのかを把握し、転移性脊椎腫瘍患者に望ましいケアプログラムの構築を目指す。
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