本研究課題は、日本の出産の99%が病院・診療所で行われていることに着目し、病院・診療所における産婦の主体的な出産に向けた助産ケアを、助産師と産婦の双方の視点から明らかにし、さらに、病院・診療所における助産技術の特殊性を検討することである。本年度は、病院・診療所における産婦の主体的な出産に向けた助産ケアと、産婦の主体的な出産ならびに助産ケアに影響を与える病院・診療所の背景要因を明らかにすることを目的に、出産後の女性と助産師の双方を対象に調査を行った。出産後の女性を対象とした調査では、病院・診療所において経膣分娩を経験した産後3か月~1年未満の女性、10名に面接を行った。助産師を対象とした調査では、病院・診療所に勤務し助産師経験が10年以上、かつ産婦の主体的な出産に向けた助産ケアを実践していると看護管理者から推薦された助産師13名を対象に、4つのグループをつくり、フォーカスグループインタビューを実施した。現在、それぞれデータ分析の途中であるが、出産後の女性が役立ったと感じた分娩期ケアと、助産師が産婦の主体性を引き出すために行っている分娩期ケアの相違点と共通点がみえてきている。また、病院・診療所では助産師の業務の兼任や多忙、非日常的な環境など、産婦の主体的な出産を制限する要因がいくつかあることが示唆されたが、その制限の内容においても産婦と助産師の間では相違点がある可能性がある。今後は、双方の研究結果を照合しながら、共通点と相違点を検討し、産婦の主体的な出産に向けた助産ケアとそれに影響を及ぼす病院・診療所の背景要因を明確化していく。
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