平成25年度はデータ収集と分析を行った。まず入院中の子どもの母親16人を対象としてストレスコーピングに関するアンケート調査を行った。調査票の内容は、属性の他、精神的健康(GHQ28)、レジリエンス、コーピング(TAC-24)から構成した。子どもが退院した後、外来受診時に二回目のアンケート調査を行ったが、研究期間中に同一対象者の継続比較が行えたのは3例のみであった。結果の分析より、母親の精神的健康は子どもの退院後改善した事例が2名であり、これら2名はレジリエンスも向上していた。入院中の付き添いの有無や退院後の育児環境によって心理的ストレスの状態は異なっていることが考えられた。コーピングに関しては、下位尺度によって傾向が異なっていたが、3例とも退院後は「放棄・諦め」得点が入院時より低くなっていた。今後も可能な限りデータを集積させ継続的に分析していく予定である。 さらに前年から計画していた通り、外来受診している慢性疾患患児の母親181名と、病気のない子どもの母親439名を対象に調査を行った。縦断的調査と横断的調査を組み合わせることで、慢性疾患患児を育てる母親の心理的ストレスコーピングの実態を明らかにすることを試みた。その結果、慢性疾患児の母親では健康児の母親と比較して、精神的健康が良くなく、レジリエンスも低いことが明らかとなった。また、コーピングでは「肯定的解釈」が低かった。これらについて複数の要因を統合して分析する目的で共分散構造分析モデルを作成し、子どもの疾患の有無による多母集団分析を行った。 得られた結果の一部については、第35回国際ヒューマンケア学会で発表する予定の他、論文として専門雑誌に投稿中である。
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