本研究では、妊娠期の快適性に関する尺度の開発と、その信頼性・妥当性の検証を行うともに、妊娠期の快適性と出産満足度・育児行動との関連について、(1)妊娠期の快適性が高い女性は出産満足度が高い、(2)妊娠期の快適性が高い女性は肯定的な育児行動を示す、の2つの仮説検証を行った。 平成23年度は、昨年度作成した妊娠期快適性尺度を用いて、縦断的調査を行った。仮説検証については、全体として妊娠期の快適性と出産満足度、妊娠期の快適性と育児行動には有意な正の相関が認められ、2つの仮説は検証された。それぞれの下位尺度ごとに、分析したところ、初産婦と経産婦では異なる特徴が認められた。初産婦においては、妊娠末期の快適性は周囲との交流による支えや母親になる実感とわが子への愛着、妊娠生活において変化する自分に関する側面が出産体験における母親としての自覚が高いことや、妊娠末期の母親になる実感とわが子への愛着に関する快適性が、産後の母親としての満足感、特に母親としての自己肯定感が高いことと関連していた。経産婦においては、様々な側面の快適性が出産体験の様々な側面の自己評価や、産褥期の母親であることの満足感が高いことと関連していた。また産褥期の母親役割の自信においては、妊娠期の父親へ成長する夫との関係性の深まり、わが子の動きによる相互作用、周囲との交流による支えに関連する快適性の高いことが、わが子の生理的欲求の合図の読み取りや要求への応答ができることと関連していた。 以上のことを踏まえ、初産婦に対して妊娠期には、母親になる実感をわが子への愛着に関する快適性を強化していく看護援助が有効であり、さらに実際にわが子が生まれた産褥期になってから、母親役割の自信や、母親であることの満足感を促す看護援助を提供することが必要である。そして経産婦に対しては、妊娠期にさまざまな側面の快適性の中でも、夫や周囲のサポートに関連する快適性を高める看護援助が有効であることが考えられた。 今後は、未回収分の質問紙を含め、再分析を行い、学会発表、論文発表を行う予定である。
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