研究概要 |
本年度の計画は、妊娠期夫婦への質問紙調査により妻の精神的健康および夫の関わりを検討することである。その前段階として以下の研究を行った。 【目的】「妊娠期の妻への夫の関わり夫婦満足尺度」の作成と信頼性・妥当性の検討を行う。 【方法】1.対象 第1子妊娠期の夫婦800組に配布し、夫婦397組(49.6%)から回答が得られ、有効回答数は夫婦共に回答の得られた376組(47.0%)、分析対象は自然妊娠後の夫婦316組(39.5%)であった。2.調査内容 予備調査で作成した妊娠期の妻への夫の関わり尺度と属性、及びQMI(夫婦関係満足尺度)を実施した。 【結果】1.因子分析 夫婦各々で因子分析(主因子法、プロマックス回転)を行った。妻:初期3因子11項目、中期3因子12項目、後期2因子16項目、夫:初期2因子12項目、中期3因子14項目、後期2因子10項目が抽出された。妊娠各期に「妻の健康と情動への気づかい」「家事労働の援助」「子どもの誕生に伴う夫婦のコミュニケーション」が抽出された。2.下位尺度間の相関 夫婦各々の下位尺度間のPearsonの相関係数を算出した結果、有意な正の相関(r=0.20~0.64, p<0.O1~0.05)が示された。3.内的一貫性による信頼性の検討 夫婦各々の下位尺度のCronbach'sαを算出した結果、中~高い信頼性(α=.75~.86)が確認された。4.併存妥当性の検討 夫婦各々の下位尺度とQMIとのPearsonの相関係数を算出した結果、夫の初期第2因子と中期第3因子以外の下位尺度とQMIに有意な正の相関(r=0.16~0.65, p<0.O1~0.05)が示された。 【結論】妊娠期の妻が満足と感じる夫の関わりを夫婦の認識から測定できる尺度が作成され、その信頼性・妥当性が認められた。この尺度の臨床での活用により、妊娠期から育児期の縦断的な夫婦関係を評価することができる。
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