本研究の目的は、NICUを退院した子どもとその家庭を支援する保健・福祉・教育の地域連携体制の構築である。具体的には、NICUを退院した子どもを育てる父親と母親の実情を把握し、支援のあり方を検討することである。とくに近年、NICUを退院したフォローを要する子どもの数は増加しており、支援の充実が求められている。平成22年度末までにNICUを退院した子どもを養育する父親と母親5組10名に半構成的面接を実施した。インタビューの内容は、妊娠から出産、子どものNICU入院から退院、現在の家庭での育児において、父親と母親がそれぞれ置かれた状況と気持ちや行動についてである。インタビュー内容は同意が得られれば録音し、それを逐語録におこし、質的記述的方法を用いて分析を行っている。双子を養育する父親の分析結果(一部)では、「双子育児の苦労を実感し夫婦で共にする子育て」、「双子育児の負担を協力と工夫で軽減」、「妻と双子の心配ごとを受容」、「病院で適切なケアを受ける安心感」、「双子が元気で生きていることへの感謝」、「NICUで育つことの影響を懸念」、「双子への愛情と成長発達を実感」、「妻への関心と配慮」、「妻と共に親役割を遂行」、「育児支援環境未整備への不安」の10カテゴリーが抽出されている。小児虐待の増加や育児不安など子育てをめぐる諸問題の解決は、現代日本社会の喫緊の課題である中、子どもの健やかな発育を目指す子育てには、母親だけではなく父親の役割が重要視されている。平成23年度も引き続き、父親と母親の両者へ本調査を実施し、分析と考察を重ね、学会での成果発表などに取り組む予定である。
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