本研究の目的は、産後女性への骨盤底筋訓練の支援と管理を携帯電話双方向通信(メール機能)を用いておこない、骨盤底筋訓練のコンプライアンスを向上させ、尿失禁を改善・予防することである。また、産後に多忙な女性に携帯電話による双方向通信が保健指導の管理や記録として活用できるかについての可能性を探求することで、今後の新しい保健指導のあり方を探索することである。 本年度は阪大学医学系研究科保健学専攻の倫理審査の承認を受けた後、携帯電話双方向通信システムの有効性を検証するため、産科診療所1か所を研究実施施設として臨床試験を開始した。研究実施施設の研究協力者との数回の打合せにより研究プロトコールの微調整をしながら対象者への研究説明文書、同意書、同意撤回書、携帯電話双方向通信システム登録方法マニュアル(ドメイン解除マニュアル)、骨盤底筋訓練指導用リーフレットを作成した。また、スマートフォンの普及により大きなデータ通信が可能となったためFUISQ (尿失禁分類判定用問診票)を盛り込んだ調査票や基礎データ収集を双方向通信システム上で収集できるようにシステムの再構築をおこなった。また、大阪大学医学部付属病院未来医療開発部データセンターにサンプルサイズの算出を依頼し、被験者数など設定をおこない無作為に被験者を割り当てられるようにした。得られたデータは大阪大学看護学雑誌に論文掲載し、International Council of Nursing 25th Quadrennial Congress (ICN)で発表した。 この研究の意義と重要性は、従来行われてきた産後の保健指導の方法に携帯電話双方向通信システムを活用することによって指導内容コンプライアンスの向上、産後女性の尿失禁有病率の低下、尿失禁で悩む産後女性のQOLの向上が期待できることである。
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