本研究は、発達障害をもつ子ども・家族との調和を生む看護の中範囲理論構築を行い、看護における発達障害児への支援の質の向上に寄与することを最終目的とする研究の一部として、発達障害をもつ子どもとその家族の調和がどのようなものかを明らかにすることである。 研究方法は発達障害の子どもの家族に半構造化面接を行い、修正版グラウンデッドセオリー(M-GTA)を用いた質的研究である。24年度は、所属機関の倫理委員会の承認を受け、発達障害の子どもの母親5名に子どもが診断されるまでと診断後の継時的プロセスを追って、発達障害の子どもとの相互作用、心理についてインタビューを行った。インタビューから逐語録を作成し、一例ごとに分析を進めた。発達障害の子どもをもつ母親は、ESSENCE徴候(全般的な発達の遅れ、言語発達の遅れ、運動制御の問題、知覚・感覚の問題、活動の問題、不注意、社会的相互作用、一般的行動、感情または睡眠の問題)を呈している子どもに、診断されるまでは試行錯誤しながら関わっていることや診断された後は療育のサポートを受けながら、 子どもの特徴に合わせ子どもの力を最大限に発揮できる方法を編み出し、周囲も巻き込み関わっていることが明らかとなった。そのプロセスの中で、母親の子どもができないことに向けられていた視点が、母親自身が肯定される体験を得ることで子どもへの肯定的な言動も増え、子ども自身も言動が安定するという調和のプロセスが示唆された。 発達障害の子どもと親との相互作用を明らかにすることは、社会的相互作用に関する知見にも影響し、肯定的な社会的相互作用を検討する一助となると考えられる。
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