研究概要 |
はじめに,近隣の保育所、幼稚園を対象に玩具の衛生管理状況に関する質問紙調査を実施した.その結果から特に回答の多かった、玩具に対する「日光照射」の有効性について,その特性から衛生管理が困難であり,微生物汚染度の高いとされる布製玩具を対象に実験的検討を行った.実験では,滅菌した玩具に均一に菌液調整したE.coli 0.5mlを塗布し,日光照射群,非日光照射群,実験的介入をしないコントロール群のATPおよび細菌コロニー数の比較をした.日光照射は屋外で行い,日中の2時間とした(午前10:30~午後12:30,10月下旬). 質問紙調査では,58の対象施設(回収率84.1%)より回答が得られた.その結果,すべての対象施設において,玩具に対する衛生管理が実施されていたが,その具体的方法に統一性はなく,施設によってばらつきがみられた. また,布製玩具に対する日光照射の有効性を検討した実験では,ATPが日光照射群で442.0±356.6RLUと最も高く,次いで非日光照射群が362.9±210.9RLU,コントロール群は314.4±123.8RLUと最も低かった.細菌コロニー数(logCFU)は日光照射群で2.1±0.8logCFU/mlと最も少なく,次いで非日光照射群が2.9±0.5log CFU/ml,コントロール群は4.6±1.0logCFU/mlと最も多かった. 実験的検討では,日光照射群における細菌コロニー数が最も少なかったことから,日光照射が被検菌E.coliを減少させることが明らかとなったものの,同群におけるATPが高値を示しており,日光照射時間が2時間に達しない場合,E.coliの増殖を促し,むしろ逆効果となる可能性が示唆された.
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