研究概要 |
これまでの研究において、小児が共有する玩具ではある一定の細菌汚染が明らかとなっているが,具体的な菌種の同定については検討されていなかった,したがって平成23年度は保育所の園児が実際に使用した玩具に付着した具体的な細菌の同定をすることとした。さらには明らかとなった細菌の特徴から、適切な衛生管理の方法を検討することとした。 その結果、今回検出された細菌はいずれも健康人に対して通常は非病原性とされる細菌であった。 従って、健康な小児においてはこれらが付着した玩具の使用によって感染症を発生する可能性は低いと考えられるが、抵抗力の著しく低下した小児では日和見感染を起こす可能性もある。 また、特にヒトの常在細菌として分布するStaphylococcus属が最も多かったことから、玩具の使用に伴って小児の持つ常在細菌が、玩具に高い頻度で移行したと考えられる。このことから小児が病原性を有する細菌を保有していた場合、常在細菌と同様に病原性の高い細菌も玩具に移行する可能性があると考えられるため,小児が共同使用する玩具が間接的な接触感染の媒介物となる危険性があるといえる。 特に感染症の流行期においては玩具の衛生管理を徹底するべきであることが明らかとなった。 さらに具体的な衛生管理方法については、今回の実験において分離された細菌はいずれも一般的な消毒薬が効きやすいものであり、低水準もしくは中水準の消毒薬によるふき取り等が適切であると考えられた。
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