研究概要 |
筆者の研究結果から、注意欠陥多動性障害(以下、ADHD)児の母親は、児の行動特徴が顕著なほど子どもに対する愛着(マターナルアタッチメント:以下、MA)が減少し、その結果、否定的で厳格な養育態度となることが示された。ADHD児の母親の養育態度が厳格となる背景に、子どもの行動特徴がMA形成を妨げていることが疑われた。そこで今回の研究では、ADHD児の母親に特化したMA尺度を作成し、ADHD児特有の行動全般を広範囲に把握し、子どもの行動特徴とMAとの関係を明らかにすることを目的とする。MA尺度として既に信頼性・妥当性が確認されている、Maternal Attachment Inventoly(Muller,1994)、日本版MAI(太田,2001;中島,2001)、母親の子どもに対する愛着(大日向,1982)などを参考に、筆者のこれまでの研究で得たADHD児の母親の特徴を加味し、ADHD児の母親に特化したMA尺度の質問項目を作成した。次に、尺度全体と各項目が概念に属するか、発達障害児の家族関係の専門家に評価を依頼し内容的妥当性を検討した。専門家とADHD児を持つ母親に、各項目について明瞭/不明瞭のいずれかを選択してもらい表面的妥当性を検討した。プレテストとして40名から回答を得、各項目の平均、標準偏差、最大値、最小値、歪度、尖度、分布を確認し、被験者の反応から回答がスムースに行えるかを検討し、最終的な尺度項目を決定した。研究結果の信頼性確保のため、本研究の被験者は併存障害を持たないADHD児の母親とし、純粋なADHDの行動特徴を把握したうえでマターナルアタッチメントとの関連を検討する必要がある。しかし実際に回収した回答の中に併存障害を持つ児が存在したため、そのデータは分析対象から除外した。今後、100以上のサンプリングを目標としてデータ収集を行う。
|