ADHD児の行動特徴とマターナルアタッチメントとの関連を検討するため、マターナルアタッチメント尺度を作成し質問紙調査を実施した。ADHDと診断された学童の母親68名(ADHD群)を対象とし、愛着尺度(現実・理想)、対児感情尺度、ADHD RS-IV、反抗挑戦性評価尺度、行為障害症状の程度についての質問紙回答を得た。対照群として、子どもの年齢、母親の属性が類似した通常学級児の母親60名の回答と比較した。2群の比較には、対応のないt検定を用いた。愛着(現実・理想)、対児感情、行動特徴(ADHD RS-IV、反抗挑戦性評価尺度、行為障害症状)との関連は、Pearsonの積率相関係数を求めた。対児感情(接近)、愛着(現実)については、ADHD群と比較して対照群の方が有意に得点が高かった。一方、対児感情(回避)については、対照群と比較してADHD群の方が有意に得点が高かった。行動面に関しては、不注意、多動/衝動性、反抗挑戦性、行為障害のすべての項目において、ADHD群の方が有意に得点が高く、また、両群において、不注意や多動/衝動性を伴うADHDの行動特徴や反抗挑戦性の高い行動、行為障害傾向の高い行動特徴は、子どもに対する母親のネガティブな感情と関連を認めた。ADHD児の母親の子どもに対する愛着感は、行為障害傾向の高い行動特徴と関連を認めた。これらの結果から、ADHD児の行動特徴は母親のネガティブな感情と関連し、行為障害傾向の高い行動特徴が子どもに対する愛着感と関連していることが示唆された。
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